「麗かな午後、乙女は夢を見る」
作者: ハルさん

 

 

「ねぇ、トモエちゃん。
トモエちゃんの夢って何?」
午後の暖かな陽射しが指す図書館で、ミーヤは目の前に座る少女に問うた。
トモエと呼ばれた少女は、本を捲る手を止め、顔を上げミーヤを見つめる。
口元には柔らかな笑みが浮かんでおり、瞳はミーヤだけを捕えている。
「なぁに、当然どうしたの?ミーヤさん」
トモエはくすくすと笑いながら、ミーヤに答えた。
トモエが笑い、トモエの声を聞いた途端、ミーヤは己の心臓が強く脈打つのを感じる。
「あ、あ、あのね、」
トモエの視線に少し戸惑い、ミーヤは言葉をつかえながら返す。
「その…夢ってゆうか、トモエちゃんの目標って、何かなぁって思って」
「そんなことを聞いてどうするの?」
「わ…私も、同じ目標を持って、トモエちゃんみたいに頑張ってみようかなって」
手を左右にぱたぱたと振り、ミーヤはトモエの視線を遮ろうとする。
しかし、トモエは相変わらず真っ直ぐにミーヤを見つめていた。
「決まってるじゃない。
私の夢は、立派な乙女になることよ」
トモエは本を閉じて、ミーヤに言った。
風が内緒話をする様にざわめき、開放された窓から入り込んだ。二人の空間を静かに通り抜ける。
それはまるで、二人の心の隙間に入り込んだ様だった。

このガルベローデに在学する少女達の目標は一つ。
乙女になること。
国の誇りである乙Himeになるために、少女達は日々心身を鍛えている。
この学園は、乙女になるため、闘う決意をした少女達の箱庭なのだ。
この箱庭に居る者に、例外は無い。
ミーヤも、そしてトモエも。

「今はお姉様達の後を追うので精一杯だけれども…。
いつか、立派な乙女になって国の皆の誇りになりたいわ。ミーヤさんも、そうでしょう?」
「う、うん。
私は………… 」
立派な乙女になる、と微笑んだトモエを、ミーヤはぼうっと見つめていた。
彼女が言う、彼女が追いかけている人は誰だろう。
その人はいつも、トモエの心の中で大きな範囲を占めているんだろうか。

(そうだとしたら……
ううん、そうだとしても、私は……)
ミーヤが思索に耽っている最中、トモエはふと窓の外に視線を移した。
陽射しが彼女を照らし、ミーヤにとってそれは、酷くトモエが虚ろで遠い存在に見えた気が、した。
「…ミーヤさん?」
時間が停止した様に、口を開けたままトモエに見とれているミーヤに、トモエが静かに優しく声をかけた。
「どうしたの、いきなりぼうっとして」
「あ、あ、ごめんね」
トモエによって現実に引き戻されたミーヤは、慌ててトモエに向き合った。
「あのね、私トモエちゃんならきっと凄い乙女になれると思う。
トモエちゃんは頭も良いし、舞闘も強いし、
誰よりも凄い乙女になれるよ。」
トモエは口元に微笑を浮かべ、
「ありがとう、ミーヤさん」
と短く言った。
その甘美な声。
それなのに刺す様な、冷たい声。
ミーヤにとってそれは、甘い毒であった。
(…私の夢はね、トモエちゃん…)

休み時間の終わりを告げる鐘が図書館に鳴り響き、トモエは静かに立ち上がった。
「さあ、もう時間よ。行きましょう、ミーヤさん」
トモエはそう言うとくるりとミーヤに背を向け、静かに歩き出した。
その後ろを、ミーヤは懸命についていく。
(…トモエちゃんみたいに、なりたいな)
乙女達の話し声が、さざ波の様に響いていた。
ミーヤの呟きは、小さ過ぎてきっとトモエに聞こえない。

トモエの心の中に居る人みたいに自分が強くなったら、トモエは自分を見てくれるんだろうか。
隣を歩くことが出来るんだろうか。
「…そうしたら、いつかは」

私のこと、ミーヤさんじゃ無くて、ミーヤって呼んでくれるかな。私が夢見てるみたいに。

ミーヤはそんなことを考えながら、トモエの後をずっとずっと、追いかけていった。
きっと、彼女が振り向いてくれるまで。

 

 


ちょw shit!ミーヤなんて乙女心。(笑
トモエちゃん罪深いわぁ。ミーヤの夢可愛すぎます。やられました。

振り向いてもらうような努力してなさそうなミーヤもさらに萌え。彼女は言われた事するの他に何が出来るんだろうか?
トモエちゃんのために色々やってるとはいっても、自分を磨く事はあんまりしてなそうですよね。
数年後にまたチャレンジしてください。その時はトモエちゃんはもう天の上(地獄の下?w)の存在になってそうだけど。(笑

スイートな小説、ありがとうございました!

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